Overcome unexpected challenges with calm and creativity.
1. 序章
順調に進んでいたはずの仕事が、思わぬところで止まってしまう。データが足りない、承認が下りない、システムが動かない——ビジネスでは日常茶飯事です。
そんなとき、英語で “We have a big problem!” と言うと、聞いた相手は身構えてしまいます。ネイティブがよく使うのは、もっと落ち着いた一言。“We hit a snag.” です。
2. 意味・由来・使いどころ
2-1. 意味
hit a snag は、計画や作業の途中で「想定していなかった問題」に出くわすことを表します。ポイントは、深刻な失敗ではなく「対処すれば先に進める一時的なつまずき」というニュアンスがあること。悪い知らせを、冷静に、前向きに伝えられる表現です。
2-1-a. 補足:「hit a wall」との違い
どちらも「障害にぶつかる」ですが、状況の深刻さが異なります。
Hit a Snag vs. Hit a Wall — 比較
これ以上先に進めない状態。努力や方法を根本から見直す必要があるときに使う。
想定外の小さな障害で、作業が一時的に止まる状態。対処すれば先に進める。
上司への報告で “We hit a wall.” と言うと「計画を見直すべき」という重いメッセージになります。
まだ打つ手があるなら “We hit a snag. Here is our plan.”(障害の報告+次の一手)がおすすめ。
同じ悪い知らせでも、相手の受け止め方が大きく変わります。
2-2. 由来
snag はもともと、木の折れた枝や切り株など「突き出たもの」を指す言葉です。19世紀のアメリカでは、川底に沈んだ倒木が船にとって大きな危険で、こうした水中の障害物も snag と呼ばれていました。
順調に進んでいた船が、見えない倒木に引っかかって止まる——そこから「思いがけない障害」という比喩的な意味が広まったとされています。「水面下に隠れていて、ぶつかるまで気づかない」というイメージが、このフレーズの核心です。
2-3. ビジネスでの使いどころ
- プロジェクトの遅れや問題を、上司やチームに冷静に報告するとき
- 顧客や取引先に、納期・進捗の変更を丁寧に伝えるとき
- 会議で「想定外の課題」を共有し、対策を話し合うとき
- メールの件名や冒頭で、問題の存在を簡潔に知らせるとき
2-4. 類義語
3. ストーリー
3-1. 英文ダイアログ
Scene: Beacon Biosciences lab office, the next morning. Jake worked late to drill down into the Phase 3 safety data by site. Emily stops by his desk to hear the results.
Emily: Good morning, Jake. Did you get any sleep last night?
Jake: Not much. But I finished most of the analysis.
Emily: Great. So what did you find in the raw data?
Jake: The extra adverse events all come from one hospital.
Emily: Only one site? What kind of events?
Jake: Mostly high liver test results. But we hit a snag there.
Emily: What do you mean?
Jake: That site uses its own local lab, not our central lab.
Emily: So their normal ranges may be different from ours.
Jake: Exactly. “High” for them may be normal for us.
Emily: Then it could be a lab difference, not a safety issue.
Jake: Maybe. But their normal ranges are not in our database.
Emily: Can we get them from the site?
Jake: Yes, but it goes through the CRO. It may take days.
Emily: And the board meeting is on Friday. Let’s stay calm and think.
Jake: I can compare the raw values with our central lab ranges today.
Emily: Good. That gives us a first answer.
Jake: Should we tell Dr. Lewis now?
Emily: Yes. I’ll tell her what we know, what we don’t know, and our next step. Every project can hit a snag. What matters is how we respond.
Jake: Thanks, Emily. I’ll send the request to the CRO right now.
3-2. 動画
3-3. 日本語訳と解説
場面:翌朝のBeacon Biosciences研究室オフィス。ジェイクは第3相試験の安全性データを施設別に深掘りするため、遅くまで残っていた。エミリーが結果を聞きにデスクを訪れる。
Emily: おはよう、ジェイク。昨夜は少しは眠れた?
Jake: あまりね。でも分析はほとんど終わったよ。
Emily: すごい。それで、生データから何がわかったの?
Jake: 多かった有害事象は、すべて一つの病院から出ていたんだ。
Emily: 一施設だけ? どんな事象なの?
Jake: ほとんどが肝機能検査値の上昇だよ。でも、そこで hit a snag(思わぬ問題にぶつかった)んだ。
Emily: どういうこと?
Jake: その施設は、うちの中央検査機関じゃなくて、地元の検査機関を使っているんだ。
Emily: つまり、向こうの基準範囲(正常範囲)がうちと違うかもしれないのね。
Jake: その通り。向こうで「高値」でも、うちの基準では正常かもしれない。
Emily: だとしたら、安全性の問題じゃなくて、検査機関の違いかもしれないわね。
Jake: かもしれない。でも、その施設の基準範囲がうちのデータベースに入っていないんだ。
Emily: 施設から取り寄せられる?
Jake: できるけど、CRO経由になる。数日かかるかもしれない。
Emily: しかも取締役会は金曜日ね。落ち着いて考えましょう。
Jake: 今日のうちに、生の測定値をうちの中央検査機関の基準範囲と比べることはできるよ。
Emily: いいわね。それで一次回答が出せる。
Jake: ルイス博士には今伝えたほうがいいかな?
Emily: ええ。わかっていること、まだわかっていないこと、そして次の一手を伝えるわ。どんなプロジェクトでも hit a snag(思わぬ問題にぶつかる)ことはあるもの。大事なのは、どう対応するかよ。
Jake: ありがとう、エミリー。今すぐCROに依頼を送るよ。
3-4. Words and Phrases
| # | 単語 / フレーズ | 品詞 | 日本語解説 |
|---|---|---|---|
| 1 | hit a snag | 動詞句 | 思わぬ障害にぶつかる |
| 2 | raw data | 名詞句 | 生データ(加工前のデータ) |
| 3 | adverse event | 名詞句 | (医療)有害事象 |
| 4 | local lab | 名詞句 | (施設が個別に使う)地元の検査機関 |
| 5 | central lab | 名詞句 | 中央検査機関(試験全体の検体をまとめて測定する機関) |
| 6 | normal range | 名詞句 | 正常範囲、基準範囲 |
| 7 | CRO | 名詞 | 医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization) |
| 8 | stay calm | 動詞句 | 落ち着いている、冷静さを保つ |
| 9 | respond | 動詞 | 対応する、応じる |
4. すぐに使えるシンプルな表現
- We hit a snag this morning.今朝、思わぬ問題にぶつかりました。
- The project hit a snag last week.そのプロジェクトは先週、つまずきました。
- Did you hit a snag?何か問題にぶつかりましたか?
- We hit a small snag, but it is okay now.小さな問題がありましたが、今は大丈夫です。
- If you hit a snag, please call me.何か問題があったら、私に電話してください。
5. 結び
問題が起きたときに試されるのは、問題そのものより「伝え方」です。”hit a snag” は、悪い知らせを隠さずに伝えながら、「まだ打つ手はある」という余裕も同時に届けてくれます。
Emilyが示したのは、「わかっていること」「わかっていないこと」「次の一手」の3点セット。この順で話せば、上司は状況を正しく判断でき、チームは慌てずに動けます。つまずきを報告することは、失敗の告白ではなく、信頼を積み上げるチャンスなのです。
英語学習も同じです。言いたいことが出てこない、聞き取れない——それは誰にでも起こる、ただの snag。立ち止まって選択肢を考えれば、必ず次の一歩が見つかります。
(問題にぶつかりました。次の一手はこれです。)





